「THE大阪人」というのがピッタリな山本德親(55)さん。通称「ノリチカ」の呼び名で親しまれるトップウォーターに特化したハンドメイドルアービルダー。ローバイト発行人のコマツとは、共にメキシコのバスフィッシング遠征や同級生ということもあり、気心しれた関係で仲良くさせていただいている。彼といえば「とっても優しい」のだが密かに頑固。「ガラスの心で繊細」と思いきや、ダイナミックな釣りスタイルと芸風で驚かされる。いずれにしろ、群れない我が道を行く職人気質なルアービルダーと言うに相応しい。徹底したこだわりで生まれるルアーの完成度や考え方、個性溢れる人柄に多くの釣り人が彼を囲み、自社ブランド「Teat」は2026年で30周年を迎える。今回は彼が太鼓判を押すフックの話で大坂を訪れたが、自前の関西面白トークで時が過ぎ、斬ったようにフックの思いを語ってくれた。でも、これが今日まで愛される「ノリチカ節」なのだ。この男の目に狂いはない。
https://www.norichika.net
T:釣りも好きやったけど、川や山で生き物を捕まえるのも好きやったなぁ。オニヤンマのヤゴやアカハライモリを捕まえて、翌日の学校で友達に分けたりなぁ。クワガタも採れたから友達同士で通っていたんやけど…チンピラみたいな怖いお兄さんと遭遇して「お前ら、採ったクワガタ全部出せ!」って脅されてなぁ。袖から刺青が出た露骨にヤバい人やねん。あれ、おそらく出店とかで売るんやろうな…?「ないです!」って答えたら「嘘つけ!頭の上でモゾモゾしとるやないか!」ってw。
L:頭の上とはw?
T:わざわざカゴなんて持ち歩いてなかったから、1匹採るごとに被っている帽子に入れて、頭の上でキープしてたんやけどバレてもうたw。
L:絵に描いたような昭和少年だねw。
T:俺の連れを見て「なんや、お前はヒヨコみたいな顔しとるな?ピーピーって鳴いてみろ!」ってイジられて。情けないことに「ピヨピヨ!ピヨピヨ!」って、そいつも鳴きおんねんw。あれは可愛そうやったわw。耐えられなくなって、隙を見てダッシュで逃げたけどw。
L:まるで「STAND BY ME」やねw。
T:その山を越えると、バスの釣れる池があって5~6人でよう行ったわ。でもある日、行きに1人が交通事故にあってもうて。横断歩道のない環状線やったからタイミングを見てみんなで一気に渡るんやけど、また仲間に1人くらい鈍臭い奴がおんねんw。彼は救急車で運ばれて、普通は「帰ろうか?」ってなるところが…なれへんねんなぁw。
L:子供だから無敵だ(爆笑)!
T:大阪市から自転車を飛ばして、行きは山を登って2時間。帰りは降りやから30分もかかんないちゃうかな?白バイを追い抜かして「こら~、スピードを落としないさい!」って、マイクで叱られたからなぁw。案の定、1人がカーブを曲がりきれなくてガードレールに追突して飛ばされてもうて、崖の途中の木に引っ掛かって助かったんやけど、あれは…結構危なかったんちゃうかなぁw。
L:まるでバス釣りに命がけだw。
T:そやなぁ。ベイトリールに憧れて手に入れたものの、釣り場についても毎回バックラッシュして釣りにならん時期があって。いつものようにバックラッシュを水辺で解いていたら、後ろから魚神さん(釣りキチ三平の登場キャラ)みたいな人が来て「よう!ダ*ワマン!」って声をかけられて…それはそれはメッチャ恥ずかしかったわw。帽子もTシャツもダ*ワ製品で、ひたすら糸を解いていたから子供心に気まずくて。その時の思いがあるから、今自分のブランドで「TeatのTシャツが欲しい!」って声をもらっても微妙に気が乗らんねん。だって「Teatマン」って呼ばれたら嫌やろ?
L:幼少のトラウマ的なw?
T:でもその場で魚神さんがなぁ、投げる時の正しい手首を教えてくれたおかげで、バックラッシュを卒業することが出来てん。でな、俺を通り過ぎて岬の先端まで行ったと思ったら、いきなし1投目でバスを釣ってもうて。それ以来「上手い人は丸いリールと歪んだグリップと黄色の竿で釣る」って、強烈に残ってるなぁ。高校大学はアメフトのクラブ活動であまり釣りに行けんかったから、社会人になって当時のタックル(丸型リールとチャンピオングリップなど)を探しまくったら、同じジャンルの「道楽」に行き着いてんなぁ。店に通っているうちに、自分で作ったルアーを店頭で扱ってもうたり、トップウォーターの釣りがメインになったなぁ。俺は何の釣りもするけど、道楽の人達に真冬の青野ダムに連れて行ってもらったことがあって、12月の半ばくらいやってんけど結構釣れて「なんや冬でもトップで釣れるんや」と思ってしまってw。あそこで釣れなかったら、今みたいにトップにこだわってないんちゃうかな?
L:常に心に響くターニングポイントがあるね。
T:トップの楽しさを教えてくれたり、ルアー作りを認めてくれたり「道楽」には感謝してるわ。
L:自身のブランド「Teat」も2026年には30年目で、色んなこだわりがルアーに込められていると思うけど採用するフックについて教えてもらえる?
T:ウチは竿やトップのルアーを作ってるけど、ウッドのブランクはもちろん、リップやペラやブレイドの金属パーツも自分で図面をひいて作ってんねん。けど、針は針屋に任せるのが1番えーと思う。旧番のSD-31から使ってたけど、今はSD-36やな。このポイントはマスタッド(海外フックメーカー)にはまずない!これ見てみ~!爪に乗せただけで、も~刺さってるやろ?これなら安心やで。Wフックやないと障害物や水面に浮いているゴミを拾ってしまうし、Wフックの幅が開き過ぎずに丁度え~ねんな。色々使ってみたけど、化学研磨でピンピンして一番信頼出来る。我が家の包丁や刃物は全て俺が研ぐねんけど、ポイントがある包丁は食材に当てただけで切れ出すからなぁ。針だってポイントが鋭くないと弾いたりするからなぁ。もしポイントが無くなってしまったら、俺の場合は釣り場でも針先の三面を研ぐ。あとな、この針はゲープが深いからデカい魚でも骨の向こうまで掛かるやろ!?懐が深い方が断然好きやねん。で、この太さやからウチみたいに使い方が荒くても頑丈やで。釣れる時は、大概1本だけでなく2本とも掛かっているし。もちろんバレにくいし、この針なぁ、ホンマによう出来てると思うで。
L:こだわりのノリチカが言うなら間違いなわな!
OWNER CULTIVA/ SD-36 スティンガーダブル
バス・シーバスなどに最も汎用性の高いレギュラーワイヤーのダブルフック。トッププラグはもちろん、バス用ミノーからライトソルトウォーター用バイブレーションまで。サビに強くマットな風合いも特徴の一つ。10,8,6,4,2,1,1/0,2/0,3/0の号数展開。全て税抜\500。
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