失敗が認められない彫師の世界。緊張感に包まれた職人技とは、釣りという反動でとことん遊んでしまうのか?生き方(釣り)を見つけてしまった三代目「彫三郎」と、その一門に釣りとの出会いを聞いてみた。
- 彫さい:岐阜県は水源に恵まれているので、地元は普通に誰でもやってますよ。僕も小学生の頃、友達とバス釣りに行ってましたけど一向に釣れなくてそれ以来っすね。
- L:高校あたりになると「釣り」って恥ずかしくなかったですか?
- 淡水:いやいや!暴走族しながら釣竿背負って、隣の滋賀県琵琶湖まで行ってましたから。夜な夜な走って現地で朝マズメ狙ったりして(笑)。家は教員一家だからか?僕だけファミコンを買ってもらえなくて釣りばっかり行ってました。
- L:教員一家で釣りは分かるけど、暴走族は行き過ぎかもですね(笑)。三代目は?
- 彫三郎:僕も釣れないから、ヘラやコイの餌釣りにシフトしたりパチンコに走ったりして。でも、2年前くらいに淡水さんに連れて行ってもらい久々にバス釣りしてみたんです。ペンシルベイトってジャンルも知らないまま、ザラスプークでビッグバスが二本も釣れちゃって。これで出会ってしまいましたね。仕事をキャンセルしてまで…大ハマりっすね(笑)。
- 淡水:え!キャンセル?そりゃイカンやろ!彼は世界的にも指よりの腕利きなんすよ。なのにその腕を持ちながら、この欲のないところがホンマに許しがたいんすよ。
- 彫三郎:あ、これ言わない方が良かったかな(笑)。
- L:ま、特殊な世界だと思うので、内部事情はそちらでやってください(笑)。聞きたかったのは、世の中のコンピューター仕事って失敗したらリセット出来ますが、刺青にそんなミスは許されじゃないですか?相当な緊張感があるんですか?
- 彫三郎:仕事は絵を描いたり針を研いだり、順番を一つでも間違えると大変な事になります。釣りも同じく針を研いだりラインチェックしたり何かと念入りなタイプですね。でも彫ってる時も釣ってる時も、そこまでの緊張感はなく楽しみながらやってます。
- 淡水:え、リーダーが切れたとか現場トラブルないの?
- 彫三郎:家で何度も試してるし、リーダーなんて切れた経験は一回もないっすよ。
- L:普段からワンチャンスで生身の体を相手にしてるから、知らぬ間に慎重で丁寧な段取りが染み付いているかもですね。それだけ準備万端ならあとはビッグワンを誘い出すだけだ(笑)。これからも上手?く、一門仲良く、仕事と釣りの共存をして行ってください!
三代目彫三郎:彫師歴21年/釣師歴3年。マイペースながら和彫の伝統を引き継ぐ「貴重な総手彫り職人」。
彫さい:彫師歴11年/釣師歴幼少期。US西海岸ギャングスタースタイルも取り入れる和洋折衷な彫りスタイル。
釣師河方淡水:彫師歴24年釣師歴36年。思考回路が魚釣りで成り立つ後輩思いの「兄貴的和彫師」。