発行人コマツに起きたノンフィクションフィッシングストーリー。釣りはハプニングも含めた最高の遊びという事を証明します(笑)。
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東京湾シーバスをビッグベイトで狙っていた時のこと…。気がつくと、ルアーの背後に数匹のシーバスが着いて来ていた。ルアーを止めてワン?ツーでアクション。繰り返すごとに魚のテンションは徐々に上がり、遂に良型シーバスがルアーにアタック。その様子は船の上から全て丸見え。ドキドキの駆け引きから渾身のバイトまで、アドレナリンが出まくった。迫力あるバイトに竿先は大きく引き込まれ無心にアワセた。しかしその瞬間、魚の重みが無くなり糸は切れてしまった。“ラインブレイク”だ…。黄色いビッグベイトをハーモニカのように咥えたシーバスは、水中で大きく頭を振りもがき何処かへ消えて行ってしまった。「申し訳ない…」辺り一面に響き渡る心の悲鳴。頭を抱えながら脱力で腰が抜け放心状態。ルアーをつけたまま魚に切られるなんて…。事故とはいえ、自分のフィッシャーマンシップに大きな穴が開く。ルアーロストなんてどうでも良く、ルアーがついた魚の生存は至って難しいと思え、リリースを前提に釣りを楽しむ我々としては、絶対に避けたい事故の一つ。魚との知恵比べとは言え、これじゃ命をもてあそんだだけだ。イートを目的とした狩猟行為ならまだしも、ゲーム(釣り)を楽しむだけならば人として心が痛かった。
「今日は竿を置こうかな…」と考えた。しかし同船者達は必死に自分を宥めてくれていた。どうやら仲間に気を使わせてしまっている。そこで「もう一度捕ろう!」と思った。不思議と再び竿を振れば捕れる自信はあった。万が一のために、針の返しを念入りに潰しバーブレスを確認。気持ちを入れ替えてキャスト。案の定、先程より小型ではあったが数匹チェイス。だが甘くはない?アタックする様子はない。そこでテレビでしか見た事のない、水面を八の字で描き魚の活性を上げる“エイトトラップ”を仕掛けた。見る見るうちにスイッチが入ってきた小型に加え、底から丸太みたいな大型シーバスが数本浮いてきた。合計で何匹いただろう?すると、おもわずスイッチの入った小型がルアーにアタックするがフックオフ。そしてそれに吊られたか?まさかの大型が水面を割ってジャンピングバイト!ロッドは再び大きく撓る。とその時、同船者が言った「あ、さっきの切れたルアーだ!」。大型とファイトする横で、切れたはずのルアーがプカプカ浮いていた。「良かった…」さっきの魚から切れたルアーが外れてくれたのだ。それを見た瞬間「報われた…」と思え、肩の荷が下りて再び脱力してしまった。もはや大型のファイトなんてどうでも良くなってしまい、ファイトを拒否してリールのクラッチをオフにしてしまった。フリーとなった大型はグングン走り出し、浮いているルアーの針を糸で拾ってくれた。
ん?「もしやこの先に着いた大型シーバスと、再会したルアーを一緒にキャッチしたら、これオモロくない?」と、脳裏に野心が宿ってしまった。そう思ったら再びファイト!魚は目前、ランディングしようとネットを入れた瞬間に大暴れ。最後の力を振り絞り一気に船の真下へ姿を消した。「あ!」その瞬間…竿先に重みはなくなり、まさか!この日2回目のラインブレイク。船の裏にはフジツボなどの貝が付着しているため、尖った貝殻に触れたら一発でラインは切れてしまうようだ。想像とは果てしなく異なった結末。16ポンドが細いのか?この時期の丸太サイズが手強いのか?残念すぎるが、一個だけ確信出来る嬉しい事があった。このルアーはキャスト前にペンチで針の返しを念入りに潰した。完全なバーブレスを確認したため、今度こそルアーは外れているはず。浮いているルアーと再会した時のように、再び「良かった…」と思ってしまった。釣りと言う遊びを、あらゆる方向から感じた濃い一日だった。